甲子の天干「甲」は木です。地支の「子」は水です。ところが甲子に付けられた納音の名は海中金 — 海の中の金です。
木でも水でもなく金です。表に見える二文字のどちらとも合いません。木の柱になぜ金という名が付くのでしょうか。
この記事が答えること
納音は装飾ではなく構造である
三十の詩的な名は、きれいだから付けた別名ではありません。六十の座をきっちり分け、五行を一つの狂いもなく配分した一つの体系です。

早い答え — 納音は二枚目の地図である
ふつう四柱で五行を見るときは文字を一つずつ見ます。甲は木、子は水、という具合です。 ところが納音は違います。天干と地支を組にまとめ、その組に別の規則で五行をあらためて 与えます。
ですから納音は既存の五行を直す値ではありません。同じ八字の上に重ねられた別の地図です。 二枚の地図は競い合わず、それぞれ別のものを見せます。
ひと言でいうと
納音は四柱の五行を直す値ではなく、同じ文字の上に重ねられた二枚目の層です。
名はなぜ音から来たのか
納音という語は音を納めるという意味です。古い東アジアには宮・商・角・徴・羽という五つの音が あり、この五音を五行に対応させました。六十干支の一つひとつに音を尋ね、その音がどの五行に属するかで名を 付けたのが納音です。
ですから名がどれも絵のようです。海中金、爐中火、霹靂火 — 金ならどんな金か、火ならどんな火かまで教えて くれます。五行の五文字だけでは収まらなかった手ざわりを、名が代わりに担っているわけです。
なぜ六十の座に名が三十なのか
六十干支は六十あります。ところが納音の名は三十だけです。名ひとつが続いた二つの柱を まとめて覆うからです。甲子と乙丑がともに海中金、丙寅と丁卯がともに爐中火です。
例外がありそうなものですが、ありません。表を全件数えると、三十の名がそれぞれちょうど二柱ずつを受け持ち、 抜けた座も重なった座も一つもありません。
| 構造 | 内容 | 確かめた値 |
|---|---|---|
| 六十の座に名は三十 | 名ひとつがちょうど二柱を覆う | 抜けも重なりもゼロ |
| 五行が完全に均等 | 柱で数えて 金12・火12・木12・土12・水12 | 名で数えても五行ごとに六つずつ |
| 半分で繰り返す | 前半15組の五行配列が後半15組でそのまま反復 | 金火木土金火水土金木水土火木水 |
五行は余りなく分かれる
より目を引くのは均等さです。六十柱を五行ごとに数えると金12・火12・木12・土12・水12です。名で数えても五行ごとにちょうど六つずつです。
たまたま近い分布になったのではなく、はじめからそう組まれた構造です。納音では五行のどれかが他より ありふれていたり珍しかったりすることがありません。五行そのものが気になる方は 五行の話の記事をご覧ください。
配列は三十干支ごとに繰り返す
順を追うともっと面白いことが出てきます。前の十五組が作る五行の配列が後ろの十五組でそのまま反復されます。金・火・木・土・金・火・水・土・金・木・水・土・火・木・水 — この十五が二度めぐるのが納音三十です。
いわば六十干支は納音では半分ずつ二度ということになります。名は三十すべて異なりますが、 五行の骨格は半分で重なります。
表面と食い違うのは例外ではない
ここで冒頭の問いに戻ります。甲子の天干は木なのに納音は金でした。この種の食い違いはどれくらい多いのか。 六十柱すべてを照合してみました。
| 食い違いの種類 | 柱の数 | 割合 |
|---|---|---|
| 天干の五行と違う | 44 / 60 | 73% |
| 地支の五行と違う | 48 / 60 | 80% |
| 天干・地支の両方と違う | 33 / 60 | 55% |
ここから得られること
表に見える二文字のどちらとも納音が違う柱が半分を超えます。甲子が金であることは奇妙な 例外ではなく既定に近いのです。食い違いを誤りと見なす理由はありません。
では納音は何に使うのか
重ねて読む層として使います。命式の五行の均衡を見るときは天干と地支を一つずつ見る従来のやり方を使い、 納音はその上に載せて手ざわりを足します。同じ金でも劍鋒金(剣の刃の金)と金箔金(金箔の金)ではまったく 別の絵ですから。
以下は金に属する六つの名です。五行としてはどれも同じ金ですが、名が担う絵はそれぞれ違います。
| 同じ金、違う名 | 名が描くもの | 手ざわり |
|---|---|---|
| 海中金 | 海の底に沈んだ金 | まだ引き上げていないもの |
| 劍鋒金 | 刃に鍛えられた金 | 使い道がすでに決まったもの |
| 白鑞金 | 柔らかい白鑞の金 | たやすく形の変わるもの |
| 沙中金 | 砂に混じった金 | 選り分けねばならないもの |
| 金箔金 | 薄く延ばした金箔 | 広く覆うが厚くないもの |
| 釵釧金 | かんざしと腕輪の金 | 身に着ける装いのもの |
五行の五文字ではこの六つがすべて「金」の一枠に収まります。名はその一枠の中の違いを残しておきます。 納音が重ねて読む層として役に立つのは、まさにこの点です。
大切なのは順序です。納音が既存の五行判定を置き換えることはありません。二つの層は それぞれ自分の場所にあるときにこそ役に立ちます。
よくある誤解その一 — 納音が本当の五行だ
甲子は海中金だから甲子日柱は金の気が強い、と読む場合があります。ではそのとき天干「甲」の木はどこへ 行くのでしょう。二つの層は競う間柄ではないので、片方でもう片方を置き換えようとした瞬間に両方とも 使えなくなります。
よくある誤解その二 — 名のイメージがそのまま性格だ
「海中金だから深く慎重」「霹靂火だから気が短い」といった説明をよく見ます。名は比喩で あって性格を判定する規則ではありません。比喩をそのまま人に貼れば、根拠なく決めつけることになります。
自分の柱の納音を見つける
以下が三十すべてです。順番は六十干支の並びのままで、自分の日柱の干支を見つければその行が自分の納音です。 日柱がわからない方は 六十日柱まとめの記事で先に確かめてみてください。
| 干支の組 | 納音 | 意味 | 五行 |
|---|---|---|---|
| 甲子・乙丑 | 海中金 | 海の中の金 | 金 |
| 丙寅・丁卯 | 爐中火 | 炉の中の火 | 火 |
| 戊辰・己巳 | 大林木 | 大きな林の木 | 木 |
| 庚午・辛未 | 路傍土 | 道ばたの土 | 土 |
| 壬申・癸酉 | 劍鋒金 | 剣の刃の金 | 金 |
| 甲戌・乙亥 | 山頭火 | 山の頂の火 | 火 |
| 丙子・丁丑 | 澗下水 | 谷あいの水 | 水 |
| 戊寅・己卯 | 城頭土 | 城壁の上の土 | 土 |
| 庚辰・辛巳 | 白鑞金 | 白鑞の金 | 金 |
| 壬午・癸未 | 楊柳木 | やなぎの木 | 木 |
| 甲申・乙酉 | 泉中水 | 泉の中の水 | 水 |
| 丙戌・丁亥 | 屋上土 | 屋根の上の土 | 土 |
| 戊子・己丑 | 霹靂火 | 雷の火 | 火 |
| 庚寅・辛卯 | 松柏木 | 松と柏の木 | 木 |
| 壬辰・癸巳 | 長流水 | 長く流れる水 | 水 |
| 甲午・乙未 | 沙中金 | 砂の中の金 | 金 |
| 丙申・丁酉 | 山下火 | 山のふもとの火 | 火 |
| 戊戌・己亥 | 平地木 | 平地の木 | 木 |
| 庚子・辛丑 | 壁上土 | 壁の上の土 | 土 |
| 壬寅・癸卯 | 金箔金 | 金箔の金 | 金 |
| 甲辰・乙巳 | 覆燈火 | 灯火の火 | 火 |
| 丙午・丁未 | 天河水 | 天の川の水 | 水 |
| 戊申・己酉 | 大驛土 | 大きな宿駅の土 | 土 |
| 庚戌・辛亥 | 釵釧金 | かんざしと腕輪の金 | 金 |
| 壬子・癸丑 | 桑柘木 | くわの木 | 木 |
| 甲寅・乙卯 | 大溪水 | 大きな谷川の水 | 水 |
| 丙辰・丁巳 | 沙中土 | 砂の中の土 | 土 |
| 戊午・己未 | 天上火 | 天の上の火 | 火 |
| 庚申・辛酉 | 石榴木 | ざくろの木 | 木 |
| 壬戌・癸亥 | 大海水 | 大きな海の水 | 水 |
見つけたらもう一つだけ試してみてください。その柱の天干・地支の五行と納音の五行が同じか違うかを見ることです。 違っていても驚くことはありません — 上で見たとおり、そちらのほうが多数派です。
ひと文にまとめると
結論
納音は四柱の五行を直す値ではなく、同じ文字の上に重ねられた別の地図です。

自分の四柱の納音が何かは、結果画面からそのまま確かめられます。
確かめたこと
表と数値は、当サービスの納音データ六十行をすべて取り出して直接数えて作りました。三十の名がそれぞれ二柱を 覆うこと、五行が十二ずつ均等であること、配列が半分で繰り返すこと、そして表面の五行と食い違う柱の数も、 すべてそのように確かめた値です。
納音という名の由来は宮・商・角・徴・羽の五音を五行に対応させたところから来ており、明代の 『三命通会』が納音を扱った代表的な典拠として引かれます。ただし当方は原文を直接照合してはいません。紹介資料を通じて典拠の存在を確認したにとどまります。
断定しなかったことも記しておきます。この配当がどんな計算から出たのか(隔八相生や大衍之数で説明する資料が あります)は原文を確認できず、公式としては載せませんでした。どの柱の納音が最も重要かも広く使われている 見解としてのみ記しています。納音で相性を見る方法は判断の根拠を確認できなかったため、この記事では扱って いません。用語で詰まったら 四柱用語辞典を併せてご覧ください。
Mystic Universe Editorial
執筆・監修
表の三十行とすべての数値は、当サービスの納音データ六十行をすべて取り出して直接数えて確認しました。三十の名がそれぞれ二柱を覆うこと、五行が十二ずつ均等であること、配列が半分で繰り返すこと、天干・地支の五行と食い違う柱の数がそのように出た値です。納音配当の導出規則(隔八相生・大衍之数で説明する資料があります)は原文を確認できず公式としては載せず、『三命通会』は典拠の存在を紹介資料で確認したにとどまります。納音による相性は根拠を確認できなかったため扱っていません。この記事は納音の名のイメージから性格・職業・財を断定しません。
よくある質問
Q.納音五行とは何ですか。▾
天干と地支を一つずつ見るのではなく、二文字を組にまとめ、その組に別の規則で五行をあらためて与える体系です。納音という語は「音を納める」という意味で、古い五音(宮・商・角・徴・羽)を五行に対応させたところから来ています。六十干支に三十の詩的な名が付き、名ひとつが続いた二柱をまとめて覆います。
Q.普通の五行と納音五行は何が違いますか。▾
普通の五行は天干・地支を一文字ずつ五行として見ます。納音は二文字を組にして別に与えます。そのため両者が食い違うことがよくあります — 六十柱のうち天干の五行と違うものが44、地支の五行と違うものが48、両方と違うものが33です。納音は既存の五行判定を置き換えず、その上に重ねて読む層です。
Q.どの柱の納音が重要ですか。▾
日柱の納音を挙げる見解が広く使われています。ただし当方はその根拠を原文で確認できていないため、流派の見解としてのみ紹介します。四柱の納音を併せて見つつ、どれか一つを結論にしないほうが安全です。
Q.甲子は木なのに、なぜ納音が金なのですか。▾
納音が文字を一つずつ見ず、組にまとめて別の規則で与えるからです。甲子は天干が木、地支が水ですが納音は海中金です。この種の食い違いは例外ではなく多数派で、表面の二文字のどちらとも違う柱が六十のうち三十三と半分を超えます。
Q.納音で相性を見ることはできますか。▾
この記事では扱いません。納音の名の相生・相剋で相性を見る方法がありますが、その判断の根拠を確認できなかったためです。根拠の確認できない方法を紹介しておくとそのまま使われてしまうので、載せていません。
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