同じ干支の年に生まれた人は、一年だけで数十万人います。それでも、えとが同じだからといって命式まで同じにはなりません。動物は八字のうちの たった一字にすぎず、しかも元は動物ではなく 日付を記す符号だったからです。
この記事の問いはひとつです。同じ干支の人がこれほど多いのに、なぜ命式まで同じにはならないのでしょうか。 答えを見るには、天干10字と地支12字、合わせて22文字がもともと何だったのかから確かめる必要があります。
まず訂正から
地支の十二文字は動物の名前でしょうか
違います。十二の文字は季節の進み方を記した符号で、鼠・牛・虎といった動物はずっと後にその符号へ付いた渾名です。

先に答え — 22文字は時を記す符号
ひと言で
天干10字と地支12字は人の類型表ではなく、時を記すために作られた22の記号です。
命式は、生まれた年・月・日・時をそれぞれ二字に写した八つの文字です。このとき上段に置く十文字を 天干、下段に置く十二文字を 地支と呼びます。合わせて22文字、これが命式を読むのに 必要な文字のすべてです。
大切なのは順序です。この文字は「性格を分けるため」ではなく 日付を数えるために作られ、人を読むのに 使われたのはその後のことでした。命式そのものが初めてなら、まず 四柱推命の入門で八字の並ぶ位置を確かめてください。
もとの名は天干・地支ではなかった
『史記』律書はこの文字を天干・地支とは呼びません。十の文字を 十母、十二の文字を 十二子と記します。母と子という名のとおり、対になって回っていく二組の符号だったという意味です。
さらに古い辞書『爾雅』釈天には、まったく別の名が載っています。甲には閼逢、乙には旃蒙というように天干ごとに歳陽の 名があり、地支にも困敦・赤奮若といった歳陰の名が別に付いています。ここに動物はひとつも出てきません。 年を数えるための名札だったからです。
ここで得られること
動物が付く前の呼び名が文献に残っています。動物はこの文字の本質ではなく、後から重ねられた一枚です。
天干十文字の本来の意味
律書は天干を方位ごとの風に割り当てながら、字ごとに意味を添えます。ところがその意味は性格ではなく、すべて 芽が出て育ち実り蔵われる過程です。甲は万物が殻を割って出ること、乙は軋みながら生い立つこと、丙は 陽の道が明らかになること、丁は万物が壮んになることです。
秋に向かうと調子が変わります。庚は陰気が万物を改めること、辛は万物が新たに辛く生じること、壬は下で万物を任い養う こと、癸はようやく揆り得るようになることです。一年が一巡りする物語が、そのまま十文字に入っています。
ここでひとつ断っておくことがあります。戊と己はこの箇所に現れません。律書が十母を東・南・西・北の 四方の風に配る構成のため、中央にあたる二字が配当表の外に置かれているのです。他の文献の解説を引いて空欄を埋める こともできますが、この記事では 律書にないものはないと書きました。
同じ五行の二つの顔 — 陰陽の配当
天干の十文字は二つずつ組んで五行をひとつ分け合います。甲乙は木、丙丁は火、戊己は土、庚辛は金、壬癸は水です。前の字 が陽、後ろの字が陰で、同じ五行でも表れ方の肌理が違います。
- 甲(こう) · 木 · 陽 — 殻を割って出る
- 乙(おつ) · 木 · 陰 — 軋みながら生い立つ
- 丙(へい) · 火 · 陽 — 陽の道が明らかになる
- 丁(てい) · 火 · 陰 — 万物が壮んになる
- 戊(ぼ) · 土 · 陽 — 律書のこの箇所には現れない
- 己(き) · 土 · 陰 — 律書のこの箇所には現れない
- 庚(こう) · 金 · 陽 — 陰気が万物を改める
- 辛(しん) · 金 · 陰 — 万物が新たに辛く生じる
- 壬(じん) · 水 · 陽 — 下で万物を任い養う
- 癸(き) · 水 · 陰 — ようやく揆り得る
五行が互いにどう生じ剋するかが不慣れなら、 五行の生剋を先に開いておいてください。そしてこの十字のうち、生まれた日の上の字である日干が命式解釈の基準点になります。
地支十二文字の本来の意味
地支も同じです。子は下で増えること、寅は万物が蠢いて生まれ始めること、卯は繁茂すること、酉は老いること、戌は尽きて 消えることです。十二文字を順に読むと、一年が生まれ育ち実り衰える過程がそのまま現れます。
下の表では、二列目といちばん右の列を並べて見てください。本来の意味と動物に何の関係もないことが ひと目で分かります。
| 地支 | 律書が記した本来の意味 | 節気の区間 · 時刻 | 五行 | 後代に付いた動物 |
|---|---|---|---|---|
| 子(し) | 滋る — 万物が下で増え始める | 大雪〜小寒 · 23〜01時 | 水 | 鼠 |
| 丑(ちゅう) | 伝存本に解説が続かない | 小寒〜立春 · 01〜03時 | 土 | 牛 |
| 寅(いん) | 蠢く — 万物が生まれ始める | 立春〜啓蟄 · 03〜05時 | 木 | 虎 |
| 卯(ぼう) | 茂る — 万物が繁茂する | 啓蟄〜清明 · 05〜07時 | 木 | 兎 |
| 辰(しん) | 震い立つ — 万物が動き出す | 清明〜立夏 · 07〜09時 | 土 | 龍 |
| 巳(し) | 已に尽きる — 陽気が行き着く | 立夏〜芒種 · 09〜11時 | 火 | 蛇 |
| 午(ご) | 交わる — 陰と陽が交差する | 芒種〜小暑 · 11〜13時 | 火 | 馬 |
| 未(び) | 熟す — 万物が成って味を持つ | 小暑〜立秋 · 13〜15時 | 土 | 羊 |
| 申(しん) | 収める — 陰が事を執り万物を損なう | 立秋〜白露 · 15〜17時 | 金 | 猿 |
| 酉(ゆう) | 老いる — 万物が老いる | 白露〜寒露 · 17〜19時 | 金 | 鶏 |
| 戌(じゅつ) | 滅する — 万物が尽きて消える | 寒露〜立冬 · 19〜21時 | 土 | 犬 |
| 亥(がい) | 蔵す — 陽気が下に隠れる | 立冬〜大雪 · 21〜23時 | 水 | 猪 |
節気の欄の読み方
真ん中の欄は 旧暦の何月ではなく 節気の区間です。四柱推命の月支は暦月の 初めではなく節気の入り日を境に変わるため、入り日の前後に生まれた場合は暦の月と月支がずれることが あります。時刻の境界も同じなので 生まれた時刻と真太陽時も併せてご確認ください。
丑の行が空いているのは手落ちではありません。伝わる律書の本文は十二月の箇所で丑を指すだけで、解説の文が続きません。 他の書物には丑の解説がありますが、それを律書の引用のように移すことはしませんでした。
動物はいつ結び付いたのか
地支と動物を今日と同じ形で組み合わせた最も早い記録は、後漢・王充の『論衡』物勢篇です。そこに「寅は木であり、その禽は 虎である。戌は土であり、その禽は犬である。……亥は水であり、その禽は豕である」と記されています。
さらに注目したいのは 王充がなぜその配当を書いたかです。彼は五行が互いに勝つという論を確かめるために 動物を持ち出します。「木は土に勝つ、ゆえに犬と牛・羊は虎に服する」という具合です。つまり動物は地支の内実を説明する ために付いたのではなく、五行の相勝を目に見える形にするために動員された例に近いのです。
時間順に並べると
- 日付を記す符号として使われる — 殷墟の甲骨文の段階
- 年を数える別名が付く — 『爾雅』釈天
- 字ごとに生長段階の意味が添う — 『史記』律書
- 動物が対応する — 後漢『論衡』物勢篇
動物はこの列の いちばん末尾にあります。
では干支でどこまで言えるのか
えとは 年支の一字です。生まれた年の下の字に付いた渾名であって、命式そのものではありません。残る七字は 生まれた月・日・時によって変わり、えとが同じであることはその七字について何も決めません。
ですから「寅年だから性格がこうだ」という言い方は、八字のうちの一字、しかもその字の本来の意味ではなく渾名に寄りかかって 人を語ることになります。えとは自分の命式にどの字が入っているかを知る 入口としては役に立ちますが、 性格・相性・職業を決める根拠にはできません。
地支の中には天干がまた入っている
地支が天干と決定的に違う点があります。地支は中が空ではありません。十二の文字それぞれの内側に天干が 一字から三字まで隠れており、これを 蔵干と呼びます。
そのため同じ地支を持っていても、どの蔵干が実際に働くかで読む方向が分かれます。表に見える五行だけを数えると、この層が まるごと消えてしまいます。内側の字を見る方法は 蔵干ガイドに続きます。
天干と地支は役割が違う
| 比べる点 | 天干10字 | 地支12字 |
|---|---|---|
| 置かれる位置 | 四柱の上段 — 年干・月干・日干・時干 | 四柱の下段 — 年支・月支・日支・時支 |
| 一字が抱えるもの | 陰陽ひとつと五行ひとつだけで単純 | 季節・月・時刻・方位が一緒に入る |
| 内側に隠れる字 | ない — 見えるとおり | 蔵干が一字から三字まで入る |
| 読むときの役割 | 表に現れて動く側 | 環境と土台、季節条件を差し出す側 |
解釈するとき、この二つを切り離して読むことはありません。年・月・日・時のそれぞれが上下二字で ひとつの柱を成すので、上の字が下の字に根を持っているかを一緒に見ます。生まれた時刻が曖昧だと時柱ごと揺らぐのもここに理由があります — 生まれた時刻と真太陽時も合わせてご覧ください。
22文字が六十の組になる理由
ここで最初の計算に戻ります。上の十字と下の十二字を組ませれば、算術のうえでは120通りになります。ところが実際に使われる 組は 六十だけです。
陽は陽と、陰は陰としか組まないからです。甲(陽)は子(陽)と組み、乙(陰)は丑(陰)と組みます。甲と丑 のように陰陽が食い違う組み合わせは、そもそも作られません。そのため可能な120通りの半分である60通りが残り、これが 六十干支です。10と12の最小公倍数が60であることとも正確に一致します。
よく取り違えられる点
英語の資料には、この箇所で最小公倍数を10×12と書いて120と60を混ぜてしまっているものがあります。10と12の最小公倍数は60 であり、120にならない理由は計算ではなく 陰陽の食い違う組を作らないという規則にあります。
なお子・午・巳・亥の陰陽は、体用をどう見るかによって流派ごとに表記が分かれます。ただし六十干支を並べるときは、順に陽・陰 が交代する基準を用います。
六十干支が実際に置かれる場所
六十の組は年にも月にも日にも時刻にも同じように巡ります。ですから命式の四柱には、それぞれ六十干支のうちの一組が入ります。 このうち生まれた日の組を 日柱と呼び、子平の系統はこの位置をとりわけ重く読みます。
六十の日柱をひとつずつ見ていく話は 六十日柱論で、生まれた年や月の字がどんな流れを作るかは 十二運星に続きます。
文字どうしが出会うとどうなるか
八つの文字はただ並んでいるのではなく、互いに引き合い、ぶつかります。二字が結んで性質が変わる 合、正面から ぶつかる 冲、そして刑・破・害がそれです。
ただしこの相互作用は条件が細かく、ここで要約だけすると却って誤解を生みます。組み合わせごとの成立条件と読み方は専用の記事に まとめてあります — 合・冲・刑・破・害ガイドをご覧ください。
自分の命式で22文字を確かめる四つの文
- 「自分の八字を、上段四字と下段四字に分けて書けるか」
- 「生まれた日の上の字、すなわち日干はどの字か」
- 「自分のえとは八字のどこにあるか。残る七字は何か」
- 「下段の四字それぞれに、どの蔵干が入っているか」
この四つを書き出すと、「私は何年生まれだ」から「私の命式はこういう字でできている」へ視点が移ります。ここが四柱推命を読み 始める地点です。
ひと文で覚える
結論
天干10字と地支12字は人の性格表ではなく時を記す22の符号であり、えとの動物はその符号に後代が付けた渾名です。

自分の命式を開いて上の四字(天干)と下の四字(地支)に分けて読み、えとにあたる年支が八つのどこにあるか探してみてください。
出典と根拠の扱い
天干・地支の本来の呼称(十母・十二子)と字ごとの解説は『史記』律書、動物と無関係な古い名(歳陽・歳陰)は『爾雅』釈天、 地支と動物の対応が初めて体系的に載る箇所は『論衡』物勢篇の原文をそれぞれ直接開いて確かめました。殷墟の甲骨文の段階で すでに干支で日付を記していたことは、考古資料の整理を参照しています。
断定しなかったことが四つあります。第一に、干支を誰がいつ作ったかは書きませんでした。黄帝の時代の創製説は 伝説であり、確定できるのは甲骨文の段階ですでに使われていたという事実までです。第二に、律書の字義解説は前漢時点の解釈で あって、字が作られた当時の意味だとは書いていません。第三に、律書に解説のない戊・己と丑は他の文献で埋めず空欄のままに しました。第四に、子・午・巳・亥の陰陽は流派で表記が分かれるため、六十干支を並べる基準だけを記しました。
古典の表現は原文を引用し、解説は書き改めました。この記事はえとや天干の字で性格・相性・職業・健康を判定せず、六十干支を 運命の周期や予言として提示しません。旧版にあった天干十文字の固定的な性格要約表は、流派ごとの読みを断定に移した部分で あるため今回の改訂で外しました。
Mystic Universe Editorial
執筆・監修
『史記』律書の十母・十二子の字義、『爾雅』釈天の歳陽・歳陰の名称、『論衡』物勢篇の地支と動物の対応を、いずれも原文を直接開いて照合し作成しました。律書に解説のない戊・己と丑は他の文献で埋めず空欄のままにしています。この記事はえとや天干で性格・相性・職業・健康を判定しません。
よくある質問
Q.天干と地支は何が違いますか。▾
天干10字は命式の上段に置かれ、陰陽と五行がひとつずつだけ配当されるため単純です。地支12字は下段に置かれ、季節・月・時刻・方位を併せ持ち、内側に蔵干が一字から三字まで隠れています。
Q.十二支といわゆる「えと」の動物はどういう関係ですか。▾
地支の十二文字がえとの動物として呼ばれています。ただし動物はこの文字の本来の意味ではなく、後代に付いた渾名です。今日と同じ対応が体系的に載る最も早い記録は、後漢・王充の『論衡』物勢篇です。
Q.甲乙丙丁戊己庚辛壬癸とは何ですか。▾
天干の十文字です。甲(陽木)・乙(陰木)・丙(陽火)・丁(陰火)・戊(陽土)・己(陰土)・庚(陽金)・辛(陰金)・壬(陽水)・癸(陰水)と陰陽五行が配当されます。『史記』律書はこれを十母と呼び、万物の生長段階として解説します。
Q.同じえとの年に生まれると命式も似ますか。▾
似ません。えとは八字のうち年支の一字にすぎず、残る七字は生まれた月・日・時によって変わります。えとが同じであることはその七字について何も決めず、各地支の中の蔵干まで見ると差はさらに広がります。
Q.六十干支はなぜ120ではなく60なのですか。▾
天干10字と地支12字を算術的に組めば120通りですが、陽は陽と・陰は陰としか組まないため半分の60通りだけが成立します。10と12の最小公倍数が60であることとも一致します。
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本コンテンツは娯楽目的で提供され、専門家への相談に代わるものではありません。
